Nano Insight Japan

【TPR】
独自開発の長尺カーボンナノチューブによる応用分野拡大への挑戦 ~CNT複合ゴム・CNT不織布・CNTフィルム・CNTヤーンの応用展開~

2022年1月17日

TPR

TPRは1939年設立のピストンリング専門の会社に始まり、時代のニーズに応えて事業展開を図り、戦前は航空機部品、戦後は自動車部品からアルミ、ゴム樹脂など多様な業種に拡大して事業に取り組み、海外パートナーとの合弁を含めて海外にも事業展開を図っている。2011年社名をTPR株式会社と改名した。“Technology(技術力)”、 “Passion(情熱、とことん)”、 “Reliance(信頼)”の頭文字をとったもので会社の決意が込められている。
近年、自動車産業も自動化、電動化、軽量化の動向が進展し、一般にも材料の軽量化や高機能化のニーズが多いなか、2017年からTPRグループは共通の基盤であるナノカーボン素材の開発事業を展開している。表に示すように、CNT開発の上流から、その開発成果を活かす応用展開の下流までの事業が進められており、そこには、既存事業のコア技術の応用、TPRグループ内での異業種融合、更には、産学連携やM&Aの活用があった。CNTについては、TPR独自の製造技術が開拓され、その特徴を活かす中間技術・製品を経て顧客ニーズ・社会ニーズに結びつく応用製品の性能・機能の向上や新規応用への挑戦が行われている。また、併行して、オープンポーラス構造のナノポーラス材料の製造技術を開発している。以下にこれらの概要を極簡単に紹介する。詳細はnano techの会場あるいはオンラインでTPRのブースにてご覧いただきたい。

表: 上流のCNTの生成から、その特長を活かした下流の応用展開まで技術の流れ

CNT生成1次加工技術2次加工技術応用展示例
大型基板上に成長した長尺CNTCNT

CNT分散液
CNT複合ゴム電磁波吸収材料
CNT不織布生体電極に適用して脳波の観測
CNTフィルム 面状発熱体
CNTを引き出すCNTヤーン熱電発電モジュール

1. TPRのCNTの特徴

TPR製CNTの特徴は、先ず、図1左図に抱えている人物との対比でわかる通り大型基板上に同右図に示すように基板に垂直に約2 mmの長尺のCNTを成長させていることで、この後の応用開発品にその特徴が効力を発揮している。CNTの直径は5~12 nmで比表面積は225 m2/g以上であり、層数は3~7層で軽い。また、長尺であるため、CNT成長の触媒金属の混入率は少ないなどの特徴もある。

図1: 特大基板にCNTを成長(左) 成長したCNTのSEM写真(右)

2. 1次加工技術~長尺CNT分散液と大型基板からのヤーンの形成

CNTは互いに付着し塊になり易いので、その分散液の形成は、CNTの応用分野拡大の鍵となる。TPRは長尺CNTで分散性の高い分散液を開発した。図2のSEM像に見るようにCNTが繊維状のまま分散しており、次節で説明するように複合材など適用分野での各種特性改善効果が大きく、不織布の実現にも貢献している。また、大型基板上に成長したCNTは図3に示すように、基板からCNTを引き出し束ねてヤーンを製造するのにも適している。得られるヤーンの直径は最大125µmである。

図2: 長尺CNT分散液と
そのSEM像

図3: 大型基板からCNTを引き出し、ヤーンを形成

3. 2次加工製品の開発事例

(1)CNT複合ゴムを用いた電磁波吸収体

CNT複合ゴムでは、高濃度CNTとNBR(ニトリルゴム)との複合材のマスターバッチを開発した。高い分散性を持ち、これと樹脂・ゴムとの混錬あるいは複合化して低濃度CNT複合材にした場合でも高い分散性を維持し機能向上(強度・弾性率向上、導電性付与・帯電防止、電磁波吸収特性)を実現する。電磁波吸収に関しては、CNT 0.5 %と1 %のNBR複合材で75 GHz以上で遮蔽量が15 dB以上と30 dB以上、吸収率は共に70 %以上であった。

(2)CNT不織布を用いた生体電極

図4はCNTのみで形成される不織布電極で、丸い部分が電極、棒の部分がリード線につながる。図4右の赤線で示すように他電極と比べて低インピーダンスである。金属を使わないので、軽量で使用環境を選ばない特徴がある。図5にCNT不織布を生体電極として用い、脳波を測定した例を示す。人の頭の2箇所に電極を当てて微小電圧を測定している。耳の下はグランド端子に接続している。他の電極材に比べて低インピーダンスであり、100 µV以下の生体信号の検出が可能である。 現在、共同開発先を募集中という。

図4: CNT不織布による生体電極とその特性

図5: CNT不織布電極による脳波測定

(3)CNTヤーンを用いた熱電発電モジュール

CNTヤーンの導電率は106 S/m以下であり、電力ケーブルにおける金属の代わりにはならないが、軽量であり、金属が使えないような環境では効果を発揮する。今回、CNTの半導体特性(p型)を活用した応用例として熱電発電モジュールを提案している。

4. ナノポーラス材料の新規開発

ナノポーラス材料についてもnano tech 2022に出展する。東北大学金属材料研究所からの技術移転による金属溶湯デアロイング法(多成分系の合金から特定の元素を溶出することでポーラス構造を実現する)により、ポーラスカーボン(C)およびポーラスシリコン(Si)を作製している。材料の表面から内部まで細孔が連続したオープンポーラス構造を有しており、大比表面積であり、かつ、細孔そのものを利用可能である。また、高い結晶性により、耐食性、導電性に優れている。今後エネルギー分野において各種用途に活躍することが期待される。

 

(註)図はすべてTPRから提供された。

小間番号 : 2Q-16/2T-13-14  

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