Nano Insight Japan

【川之江造機】
セルロースナノファイバーシート連続製造用パイロット機 -抄紙技術を活用した連続式脱水・シート化法を開発-

2022年1月17日

川之江造機

ティッシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパーなどの家庭用紙、機能性紙や不織布用抄紙機、紙加工機械の設計製造を専門とする機械メーカーである川之江造機株式会社(以降、川之江造機)は、常日頃から「お客様とともに」の精神に基づいた研究開発活動に取り組んでいる。平成27から29年度には、環境省の「セルロースナノファイバー製品製造工程の低炭素化対策の立案事業委託業務」に参加した。愛媛大学や愛媛県紙産業技術センターの協力を受け、関係各企業と共同してセルロースナノファイバー(CNF)連続脱水装置の開発に取組み、川之江造機の抄紙機技術を活用したCNFの連続脱水を実現した。その後も、川之江造機はCNFに関する装置開発を続け、愛媛大学と共同でCNF連続シート化装置の開発にも取組み、CNFスラリーの連続脱水から一貫で連続シート化に成功した。nano tech 2022では、この技術に基づくCNFシート製造パイロット機の紹介とCNF乾燥シートが展示される。

CNFシート化の課題

CNFはパルプ繊維などをナノレベルまで解繊したもので、超高純度で超微細解繊されたパルプと言えよう。川之江造機はこれまでに培った抄紙の技術と経験でCNFのシート化を試みたが、その道のりはこれまでのパルプを使った抄紙とは大きく異なり、乗り越えるべき高い壁があった。
抄紙のプロセスは、スラリー化したパルプを脱水用ワイヤーに流し、脱水・乾燥工程を経て、平滑化して得たシートを巻き取る工程から成っている。CNFも基本的にはパルプと同様に湿式で解繊して作られるため、シート化するには脱水の必要がある。
CNFのスラリーは数%の低濃度でありながら粘度が高く、強いチクソトロピック性も有しており、パルプのスラリーとは性状が大きく異なる。このような高粘度でナノサイズの繊維が分散するスラリーからの脱水は、一般に非常に手間が掛かりエネルギー消費も多い。そのため、CNFの実用化において、スラリーの脱水は重要な技術開発課題となっている。一般的なスラリーの脱水法である濾過は、CNFのような高粘度で微細な懸濁物の脱水には適さず、濾材目詰まりや濾過トラブルが発生し易い。また単純に加熱して水分を除去する方法ではエネルギー消費が多く、乾燥したCNF繊維が固着して再分散が困難という問題もある。CNFの工業的生産においては、フィルタープレス、限外濾過、凍結乾燥、遠心分離などの脱水が試みられているが、何れも装置が大掛かりで回分方式の操業となり処理量が少なく、連続運転が基本の抄紙機との組み合わせには問題があった。

川之江造機の提供するリソリューション

川之江造機は従来からの抄紙機技術を基に、パルプ脱水工程を大幅に見直して改造することで、CNFスラリーの脱水を抄紙プロセスに組み込むことに成功した。脱水工程の改良は大きく(1)ワイヤーパート(プラスチックワイヤーで形成されたメッシュ部)での濾過洩れ対策強化、(2)上面からの水除去工程組み込み、(3)加圧脱水工程の組み込みの三つである。これらがシリーズでCNFスラリーの連続脱水を担い、得られたウェットシートをそのまま連続してドライヤーパートで乾燥シートに仕上げる。

(1)ワイヤー脱水

抄紙機のワイヤーパートでは、エンドレスのプラスチック製ワイヤー(メッシュ)上にスラリーを塗布してウェットシートとし、メッシュの下部から吸引して脱水する(図1、2)。連続的に大量処理ができるが目の粗い抄紙用のメッシュではCNFがすり抜けてしまい脱水出来ない。CNFのすり抜けを阻止するためメッシュ下に抄紙用フェルト重ね多層化した(図3)。これによりCNFの流路抵抗が増して水のみの除去が可能になった。実用的なワイヤーパート設計において、固形分濃度2%のスラリーを6.5%にまで濃縮する目途を得たが、このまま乾燥してシート化可能な水分量には達せず、さらに二つの新たな脱水機構を追加した。

図1: ワイヤーパート模式図

図2: ワイヤー部拡大図

図3: ワイヤーとフェルトの多層化

(2)面圧脱水

ウェットシートの吸引脱水だけではワイヤーに近い下部が優先的に脱水され、上部にまで脱水効果が及びにくく、坪量が増えるほど顕著になる。これを解決するため、曲率を持つ台に沿ってワイヤー(メッシュ)を走らせ、上部からも水透過性の基材を当て、これにテンション掛けることで加わる面圧で脱水する方式である。水は上部の基材から浸み出すように流れ出る。これによりウェットシートの上面側が脱水される(図4)。

図4: 面圧脱水

図5: 加圧脱水

(3)加圧脱水 

面圧脱水に加えてさらに脱水率を上げるため、面圧脱水後のウェットシートをピックアップし、新たな透水性基材でウェットシートの上下をサンドイッチして加圧ローラーに通して加圧脱水する(図5)。加圧ローラー一段で過度な加圧を行うとウェットシートの形状が崩れるので、三段の多段とし段階的に圧を高め固形分濃度13%までの脱水が可能になり、脱水後のCNFウェットシートは、次の乾燥工程に連続搬送される。
このように、三工程の脱水で得られた安定化されたウェットシートをヤンキードライヤーで乾燥することでCNF乾燥シートの連続作製が可能になった(図6、7)。ヤンキードライヤーにはCNFシートの収縮を防ぎ拘束乾燥シート化が可能な設備が付加されている(図8)。

図6: 脱水3工程および乾燥工程

図7: 乾燥後のCNFシート

図8: CNF用ヤンキードライヤー

川之江造機はこのパイロット機でスギノマシン製各種グレード(極長繊維、標準繊維、極短繊維)のCNFスラリーをテストし、技術データ・ノウハウの蓄積を進めるとともに、良好なシート化に成功している(図9)。CNFスラリーは同じ固形分濃度でも繊維長により粘度が大きく異なるが、脱水・シート化工程で特に問題は生じない。nano tech 2022では試作された数種類のCNFシートの展示が予定されている。

図9: CNFシート(スギノマシン製ビンフィス使用)

CNFシートはこれまでに無い新しい素材で、思いもよらない用途が出現するかもしれない。川之江造機のブース(小間番号:3M 25)でCNFシートの現物を目にし、用途展開のアイディアを膨らませて頂きたい。  
川之江造機はCNF連続脱水・シート化の一貫設備に限らず、CNFスラリー連続脱水技術を応用した大量処理に適するCNFスラリー濃縮設備などの相談にも応じたいという。

(注)図は総て川之江造機株式会社から提供されたものである

小間番号 : 3M-25  

>>製品・サービス検索はこちら

>>出展者 / 製品・技術一覧はこちら

このウィンドウを閉じる