Nano Insight Japan

【花王】
導電性カーボンの分散に特化した高性能分散剤「ルナエース」
-LiBの高容量化・長寿命化および電極製造の工程合理化・環境負荷低減に寄与-

2021年12月10日

花王

花王株式会社(花王)ではハイジーン&リビングケア、ヘルス&ビューティー、ライフケア、化粧品の各事業で、石ケンや洗剤などに始まる界面活性剤を使うさまざまなコンシューマー向け製品が開発されている。一方、ケミカル事業では未来の「人と地球と社会のきれい」をケミカルの力で実現するべく、新しい素材や技術を開発し産業界に提供している。nano tech 2022では、花王のコア技術である界面活性剤を利用した分散技術を基に、新たに開発された導電性カーボンの分散に特化した分散剤「ルナエース」が紹介される。ルナエースは、スマートフォンや電気自動車、再生可能エネルギーの発電設備などの蓄電池として、世の中で広く使用されているリチウムイオン電池(LiB)の正極に使われる導電性カーボンの分散をターゲットにしたものである。

LiBの課題

LiBの正極はリチウムイオンの出入りに係る活物質、電子の移動に係るカーボン粒子、およびそれらを結び付けるバインダー樹脂で構成される。正極はこれらの材料をNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を主とする溶剤に分散/溶解してペーストとし、金属箔に塗布・乾燥して作られる。この正極ペーストは、導電性カーボンにより引き起こされる増粘が工程上の大きな問題となっていた。

ルナエースの設計思想と働き

カーボン粒子は粒子同士が接触し連結することで電子を伝導させるので、粒子がバラバラの状態では電子は流れ難く、内部抵抗の高い電池となる。したがって、正極におけるカーボン粒子は、粒子同士が適度に接触して導電ネットワークを形成できる程度の分散状態にあることが必要である。これを実現するには、正極ペースト中におけるカーボン粒子の分散状態の制御が重要である。それに加えて、正極ペーストは粘度が低く取り扱いが容易であることが望ましい。
 ルナエースはこれらの点を考慮して設計された導電性カーボン用の高分子系分散剤である。ルナエースの骨格となるポリマーは、分散剤の基本的な役割を担う吸着基(カーボン粒子表面への親和基)と分散基(溶剤であるNMPへの親和基)に加えて、電池にとって重要な機能(電解液への溶解抑制や高電圧での耐久性など)を担う機能基という概念が導入されている。分散性に関しては、正極ペーストに分散剤を用いることでペーストが低粘度化されて流動性が向上し、固形分の高濃度化も可能となる。図は、ルナエースを加えたペーストと加えないペーストの流動性の違い、およびルナエースを用いない固形分53%のペーストより、ルナエースを用いた固形分60%のペーストの方が低粘度であることを示したものである。また、ルナエースはカーボンナノチューブ(CNT)の分散にも適している。一般的な市販分散剤とルナエースを用いて5%濃度のCNT分散液を作り比較すると、ルナエースで分散したスラリーは粘度、体積抵抗ともに市販分散剤で分散したスラリーよりも大幅に低い値となる。さらに、一般的な分散剤は4.2 Vを超える電圧域では分解するがルナエースは安定であり、特に近年、高電圧化が進む民生用電池にも対応可能である。

 このように、ルナエースを用いることで電池性能やLiB製造工程に次のようなメリットが期待される。

図 : 正極ペーストの分散剤有無と粘度

1.既存分散剤に比較し電池性能が向上

一般的な分散剤に比べ電池性能が向上する 
 ・電池内部抵抗が低くなり電池容量・出力特性の向上
 ・分散剤の電解液への溶解が抑制され不要な副反応を起こさず電池が長寿命化
 ・分散剤の分解電圧が高く4.5V以上の電位幅の広い電池で使用可能

2.正極塗布液(分散液)の低粘度化による効果

一般的な分散剤に比べ低粘度な分散液が得られるので、同じ粘度であれば高固形分化が可能 になり、混合・分散時間の短縮、乾燥速度の向上、溶剤使用量削減などの効果も期待でき、それに伴いCO2やVOCの排出が減り環境影響の低減に寄与する。

3.良好な分散性能による効果

・分散不良の粗大粒子が少なく、電極表面平滑化にも効果がある。
 ・通常では分散し難い高導電性CNTの使用も可能になる。 

以上のように、ルナエースは導電性カーボンを選択的に分散できる花王独自の設計により、電極内の導電ネットワーク形成を促して抵抗を下げ、電池の高容量化と高出力化を実現する「リチウムイオン電池用カーボン分散剤」である。粘度同等のまま有機溶媒を削減して乾燥時間を大幅に短縮することで、電池の生産性向上と乾燥負荷低減によるCO2排出量削減も実現できる。  CNTは低添加量でもカーボンブラックに比べ高い導電性が得られることから、今後ますます導入が進む材料であり、花王は、ユーザーにルナエースを提供しユーザー自身によるカーボンの分散に貢献するとともに、ユーザーからの要望に応じて所望のCNTを分散しスラリーとして提供することにも応じるという。
 LiBの電極性能向上、特にカーボンの分散性向上をご検討の方には花王のブース(ナノカーボンオープンソリューション内 小間番号 : 2T-13-04)を訪問し、討議されることを是非お勧めしたい。

(注)図は花王から提供された。

小間番号 : 2T-13-04  

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