Nano Insight Japan

【トクヤマ】
独自の化学技術で次世代社会インフラのデバイスが求める放熱材料を提案
〜高度情報通信デバイス、環境対応
パワーデバイスに資する窒化物
放熱材料:AlN・BN・Si3N4

2021年11月26日

S-Nanotech Co-Creation

次世代社会は高度情報通信システムによって支えられ、地球環境維持のためエネルギーの化石燃料依存からの脱却が求められる。情報通信デバイスは高度化、高密度化し、再生エネルギーや電動化のためにパワーデバイスが多用されるようになった。これらのデバイスの消費電力密度は増大し、動作温度確保のため放熱は喫緊の課題となる。株式会社 トクヤマ(以下、トクヤマ)はこのニーズに応え、長年にわたり培ってきた独自の化学技術で開発した放熱材料をnano tech 2022に出展する。
 トクヤマは1918年に創業し、ソーダ灰(炭酸ソーダ)を生産し、セメント工業に展開した。戦後は、石油化学事業に進出し、高純度イソプロピルアルコールは、現在、半導体製造におけるウェーハ洗浄液として高いシェアを有している。さらに高機能、高付加価値の精密化学製品(スペシャリティ)事業を展開し、多結晶シリコンは11-nineの高純度を誇り、窒化アルミニウム(AlN)は75%のシェアを獲得した。歯科材料、資源環境事業にも進出し、現在、社内に、研究開発、セメント、化成品、電子材料、ライフサイエンス、環境事業の各部門が設けられている。nano tech 2022では電子材料部門の放熱材営業部が放熱用セラミックス原料粉末、セラミックス基板、樹脂充填用放熱フィラーなどを紹介する。

1.次世代社会のデバイスニーズに応える放熱材料

放熱材料の使い方として、パワーデバイスの例を図1に示した。半導体チップで発生した熱は放熱材料で作られた回路基板、封止材、ゲル/シートなどを伝わって筐体に達し、空中に放射される。放熱材料には電気の絶縁体であって、熱伝導率の高いことが求められる。回路基板はアルミナ(Al2O3)、AlNなどのセラミックス、封止材・ゲル/シートは樹脂に放熱材フィラーを混入して作られる。
各種放熱セラミックスの物性を表1に示した。赤字は物性項目ごとに優れた特性を示す材料の数値である。窒化アルミニウム(AlN)は熱伝導率が高く、窒化ホウ素(BN)は軽くて誘電率・誘電損失が小さい。窒化ケイ素(Si3N4)は曲げ強度が大きい。
放熱材料の使い方、物性を考慮して、トクヤマは表2のような焼結用原料粉末、セラミックス板(白板)および樹脂添加用フィラーを用意している。

図1 : パワーデバイスにおける放熱

表1 : 放熱セラミックスの物性

表2 : トクヤマの放熱材料製品ラインアップ

2.独自技術の高充填性で高熱伝導性を達成する窒化アルミニウム(AlN)粉体

トクヤマのAIN粉末は、アルミナをカーボンで還元し、窒化するトクヤマの独自製法で造られる。
   Al2O3+3C+N2→2AlN+3CO
吸熱反応なので反応制御が容易のため粒径の揃った高純度AlN粉末が直接得られ、粉砕等の際に起こる不純物混入の心配がない。
 それに対し、他社の製法は金属Alを窒化、生成したAlNの塊を粉砕、分級してAlN粉末とする直接窒化法である。
   2Al+N2→2AlN
このプロセスは激しい発熱を伴い反応制御が難しく、粉砕、分級工程で不純物混入の懸念もある。
 トクヤマ独自製法のAIN粉末は粒径制御されており、ユーザーによる焼結工程での製品品質ばらつきが少なく、容易に高熱伝導度セラミックス基板の製造が可能である。AIN白板はパワー半導体や照明用LEDの基板や、プラズマ耐性を活かして半導体製造装置の部材にも使われている。
 この独自の製法の特徴を活用してトクヤマは、1 μmから120 μmという広範囲に多数の粒径仕様のフィラーを提供する。最小の1 μmや最大の120 μmのフィラーの製造は他の方法では難しい。粒径の小さい1 μmのフィラーは流動性が良い。反応条件で形状を制御して作った球状の大きい粒子は樹脂との親和性、樹脂への充填性が高まり、フィラー充填樹脂の熱伝率を高めることができる。
一般にAlNには加水分解してアンモニアを発生するという問題がある。これに対してはトクヤマ独自の表面処理技術により、アンモニアの発生を抑えることができた。表面処理や粒径は顧客の要求に応じて変更できる。

図2 : AlNフィラーの平均粒径とSEM写真(左)および粒径分布例

3.合成時の粒子形状制御で高熱伝導性を達成した柔らかい窒化ホウ素(BN)粉体

窒化ホウ素(BN)は立方晶系の結晶(c-BN)または六方晶系の結晶(h-BN)となる。c-BNは硬く研磨材になり、h-BNは鱗片状の粒子で潤滑性があって柔らかく化粧品(UVカット用ファンデーション)にも利用される。放熱材にはh-BNを用い、フィラーとして樹脂に混合して射出成形しても金型を傷めにくい。高周波域でも誘電率が低いので5Gなどのミリ波通信用途にも適する。問題は熱伝導率の異方性である。鱗片の横方向伝導率は110 W/Kmと高いが、厚さ方向は2〜3 W/Kmに過ぎない。また、樹脂との親和性を高める鱗片の結合手(官能基)は側面のみに存在して数が少なく、樹脂との混練性が低い。一方、トクヤマはAlN同様、BNを独自の還元窒化法で合成するので、粒子形状の制御が可能である。そこで、図3のように、平面状に配列する傾向の強い鱗片状結晶を肉厚板状にし、側面の官能基付着量を増やすとともに、平面(シート)に対して傾いて配向する傾向を持つ粒子を造りそれらを凝集させて、厚み方向の熱伝導率を高めた。肉厚単粒子、中粒径凝集、大粒径凝集の3品種が開発されている。

図3 : BNフィラーの粒子制御

4.高強度、高靭性窒化ケイ素(Si3N4)放熱基板と銅接合基板

窒化ケイ素(Si3N4)セラミックスはセラミックスの中でも硬くて、割れにくく、破壊靭性値が高いので信頼性の要求される車載用放熱材に適している。トクヤマは11-nineの多結晶Si事業で磨いたSi化合物の製造・処理技術にAlN事業で積み上げた高温焼成、粉体製造・制御、焼結基板製造技術を掛け合わせて、窒化ケイ素白板を開発した。トクヤマの特徴は、自社製の窒化ケイ素粉末を使用し、低エネルギー且つソルベントフリーな、環境に優しい先進的プロセスで製造できたことである。  
窒化ケイ素焼結体の白板には表面に銅などの配線パターンを設けて回路基板とする。そこで焼結体表面に窒化チタンを介して銅箔を張り付けた窒化ケイ素銅接合基板を開発した。ユーザーは窒化ケイ素と銅をパターンエッチングして車載パワーモジュールなどの回路基板として使用できる。
 トクヤマは、初めてnano tech 2022に出展し、独自技術で開発した窒化物放熱材料を展示する。材料はユーザーの利用、問題提起によって進歩する。絶縁・高放熱のセラミックス、樹脂材料を求める企業や研究者がブースに訪れ、意見交換することにより、新たな展開の生まれることを期待する。

図4 : 窒化ケイ素放熱基板:a 窒化ケイ素白板、b 銅箔張り、 c 窒化ケイ素銅接合基板

(注)図は全てトクヤマから提供された。

小間番号 : 2J-16 

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