Nano Insight Japan

【楠本化成】
リチウムイオン電池やコーティング剤、
エラストマー、樹脂向けなどに多種の
単層カーボンナノチューブ添加剤紹介
混ぜる母材ごとに最高の性能を出すために調合

2021年11月26日

楠本化成

塗料添加剤や化学薬品の製造販売を手掛ける楠本化成(東京・千代田、楠本慶太社長)は、ナノテクノロジーの代表的素材である単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を用いた様々な種類の材料用添加剤を紹介する。樹脂や塗料の導電性や放熱性、強度を大幅に高める効果がある。SWCNTの製造元であるルクセンブルクのOCSiAl(オクサイアル)社の量産体制構築によって、SWCNTの価格は2013年当時の市場価格の50分の1に下がった。そのためSWCNTを含有する添加剤の価格も工業製品に利用できるほど低価格になってきた。需要が急増しつつある電気自動車や産業機械用のリチウムイオン電池の高速充放電や高容量化に適した材料となっており、他業界向けなどを含んだSWCNT関連製品をnano tech2022で紹介する。

ルクセンブルクOCSiAlはSWCNTに特化した事業を世界展開

SWCNTと関連製品の開発と生産を手掛けるOCSiAlは2010年にルクセンブルクで設立された。社名は地球に豊富存在する酸素(O)、炭素(C)、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)から名付けた。4人でスタートしたが、現在は世界20カ国、400人以上が研究開発と事業に従事している。日本でビジネスパートナーを募った結果、2017年に楠本化成と日本国内で事業を行う総代理店契約を結んだ。
 OCSiAlが生産するSWCNTは、外径約1.6ナノ(ナノは10億分の1)メートル、長さ2~5マイクロ(マイクロは100万分の1)メートル(写真1)。

写真1 : SWCNTの走査型電子顕微鏡写真

金属と半導体の性質を持つSWCNTがそれぞれ約1対2の割合で混合している。樹脂に混合すると金属成分の性質で電気が流れるため、樹脂の帯電や過熱をおさえることができる。また金属か半導体かに関わらず、母材への微量の添加で機械的強度を高められる。  SWCNTはそのままでは凝集するため、水や有機溶媒、樹脂に分散して販売する。ユーザー企業や利用目的によってSWCNTを添加する母材の種類が大きく異なる。そのためユーザーそれぞれが用いる母材の性質に悪影響が無く、添加した効果を最大限に生かせる溶媒や助剤を選んでユーザーに供給する。
 例えばリチウムイオン二次電池(LiB)の場合、電池反応を生じさせる正極と負極の活物質、分散剤、バインダーといった材料の組み合わせが決まっている。ここにSWCNTを添加して電池の性能を高めたいが、もともとの電極の性質を損なわないようにする必要がある。そこで負極に混ぜるSWCNT添加剤には水、正極にはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を溶媒として選ぶ。ユーザー企業のニーズにこたえるため、OCSiAlはこれまでにLiBの負極と正極、帯電を防止する導電性コーティング剤、ゴム手袋、プリンター転写ロールや工業用ロールなど、様々な用途に向けた製品を品揃えしてきた。

楠本化成は日本企業のニーズに合わせた添加剤をオンデマンドで開発

OCSiAlは世界の企業や研究機関のニーズにこたえるため様々なSWCNT関連製品の開発を進めてきた。ところが日本国内でメーカーから要求される条件は海外とは必ずしも一致しない。そこで楠本化成は埼玉県の草加第2工場で日本企業のニーズに合わせた製品開発を進め、2021年7月に日本企業向けブランド「Lamfil(ランフィル)」を上市した。製品開発者がイタリア語で「雷」を意味する「Lampo(ランポ)」と「糸」を意味する「filo(フィーロ)」を組み合わせて命名した。SWCNTを電気が流れる糸に例えた。Nano tech2022では「Lamfil(ランフィル)」(写真2)を中心に紹介する。

写真2 : 楠本化成が2021年7月に国内で販売開始したSWCNT添加剤「Lamfil」

これまで5種類の水溶液に加え、フォトレジストに用いるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)を溶剤とする添加剤1種類を試作した。またエポキシ・ウレタン・アクリルUV向けなどにマスターバッチを8種類試作、そのうち1種類は製品化した。液状やマスターバッチ状の試作品は国内企業が性能を評価しており、一部は近々採用されるとみている。  現在、OCSiAlがロシアのノボシビルスクで年間70トンのSWCNTの生産能力がある。さらに本社のあるルクセンブルクにSWCNTの量産工場を建設中で2024年には年間100トンの生産体制が整い、最終的にはノボシビルスク工場と合わせて同320トンを生産できるようになる見通し。量産によってSWCNTの原料価格はさらに安くなり、添加剤の価格低下によって普及に追い風となる。特にカーボンニュートラルの目的に向けて電気自動車が増えれば、搭載するLiBのさらなる高速充放電と長距離走行のための蓄電容量増加がますます期待される。楠本化成はSWCNT関連製品がこのニーズにこたえられると期待している。

(注)写真は全て楠本化成から提供された。

小間番号 : 2A-13  

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