Nano Insight Japan

ブルカージャパン
原子間力顕微鏡(AFM)のバイオ展開に高速AFMの新製品 〜表面のナノ形状・機械物性評価から、生体の挙動解析、材料組成評価をサポート〜

2020年12月10日

BRUKER

ナノサイズのプローブを走査して、プローブと試料表面間に働く相互作用力を測定、画像化する原子間力顕微鏡(AFM)はナノテクノロジーの象徴的な計測器である。ブルカージャパンは毎回のnano tech展に多彩なAFMを出展し、表面のナノ形状・機械物性評価のニーズに応えてきた。ブルカージャパン(以下、ブルカー)は、1960年に創業したドイツの科学機器会社Brukerが世界に展開する60の拠点の中の日本拠点である。BrukerはAFMにおいて、探針が試料表面を跳ねるように上下に動いて表面状態を測定するため、生体や壊れやすい試料にも使えるタッピングモード(Tapping Mode®)、ピークフォースタッピングモード(PeakForce Tapping Mode®)を考案するなどAFMのパイオニアである。ブルカーは、材料計測に向いたAFMをマテリアルAFMと呼び、今回はBrukerのフラッグシップAFMとなるDimensionファミリーを出展する。一方、AFM計測は染色や真空を必要とせず、生体を生きたままでナノ計測できる。COVID-19対策にも細胞、ウィルスなどの観察・特性解析のため、ライフサイエンス向けのバイオAFMのニーズが高まっている。また、生体分子の動きを観察するため、探針走査がより高速に動作可能な高速AFMが必要になる。これに応えて、ブルカーは毎秒50フレームで画像取得できる高速AFM:NanoRacerを紹介する(図1)。また、赤外分光と組み合わせてナノスケール形状測定と組成分析を同時に行える赤外分光分析装置AFM-IRのパネルを展示する。

図1: 高速AFM:NanoRacer(2020年8月発表)

1.単一生体分子の動的プロセス評価のできる高速AFM:NanoRacer®

マイクロ・ナノスケールの形状計測には、AFM、光学顕微鏡、電子顕微鏡が用いられる(図2)。この中で、光学顕微鏡は染色を必要とし、電子顕微鏡観察は真空中になる。これに対し、AFMは試料の染色を必要とせず(ラベルフリー)、大気中や液中で測定ができるから、生きたままの生体を観察できる。この特徴を生かし、ブルカーではライフサイエンス向けのAFM:NanoWizardシリーズを提供している。これは、共焦点・超解像顕微鏡や光学顕微鏡にAFMユニットを搭載して、光による観察とAFMによるナノ計測を可能にしたものである。動態観察のため、画像1枚に数分かかっていたのを高速化して、動画を撮れるようにしたが、撮像速度は最大毎秒10フレーム(10 fps)であった。

図2: ナノ計測におけるAFMの利点

これに対し、ブルカーは高速化技術開発を進め、AFMに特化したライフサイエンス対応50 fpsの高速AFM:NanoRacerを開発した。図1左の本体の中に図3左のAFMユニットが収められ、その中央に試料を搭載した高速スキャナユニット(図3右)をとりつけて測定する。高速化のため最大走査範囲は2 μm×2 μmとなったが、CCDカメラを搭載して測定位置を決められるようにしている。超低ノイズ・超高帯域のデジタルエレクトロニクス、高度なスキャナ制御技術等により、長時間安定した測定ができるようにした。スキャナユニットが取り外しできるので試料調整が容易になった。プローブの位置調整を自動化して利便性を高めた。液中に試料を入れて測定するための液体セルも用意された。ソフトウェアもシンプルにし、AFMに馴れていない人も容易に操作できる(図4)。

図3: NanoRacerの高速スキャナユニット

図4: NanoRacerの操作画面

高速性を活かして、ストレプトアビジン分子がDNAオリガミに吸脱着する様子を観察した(図5)。今回用いたDNAオリガミは、ストレプトアビジンと強く相互作用する5つのビオチン側鎖を持っており、ストレプトアビジン溶液中でAFM観察を行うことにより、DNAオリガミ上において結合したストレプトアビジン分子(白矢印)の脱離や、また反対に吸着する様子が捉えられた。

図5: DNAオリガミ上でストレプトアビジン分子が吸脱着する過程(動画から特定フレームを抽出)
DNAオリガミ上に結合したストレプトアビジン分子(白矢印)

当然ながら、NanoRacerはAFMが本来持っている原子分解能を保持している。図6はカルサイト結晶の液中原子分解能像を示し、15 nm×9nmの3次元表面形状像(図6左)を4 nm×4 nmに拡大すると原子が粒状に見えてくる(図6右)。

図6: カルサイト結晶の液中原子分解能像

金沢大学ナノ生命科学研究所 特任教授 安藤 敏夫氏は、タンパク質の働く仕組みを明らかにする研究を遂行しようとAFMの高速化に取り組み、タンパク質動的プロセスにおける様々な成果を得た。そして、NanoRacerはその流れをくんだ最新の高速AFMである。ブルカーは50 fps高速AFMのリリースを機に「単一生体分子の動的プロセス評価に向けた高速AFM技術 オンラインセミナー」を2020年12月15日に開催する。安藤教授はセミナーの要旨に「高速AFMは個々のタンパク質分子の姿とその動作を直接観察することを初めて可能にした。(中略)捉えた動画像には既知の事実だけでなく、今まで知られていなかった分子の振る舞いも現れることが多く、意外な新発見に導く。」と記している(https://www.bruker-nano.jp/brukerwebinar-detail)。

2. ナノスケールの化学組成分析のできるAFM:nanoIR3 / nanoIR3-s

AFMはナノ表面形状計測から始まった。プローブに押圧を与えるなどして弾性率などの機械特性も測定でき、タイヤゴムに添加した強化剤の入り方までは観察できた。しかしその成分は分からない。同じ問題を抱えた、走査電子顕微鏡はエネルギー分散型X線分光機能を追加することにより構成元素のナノマッピングを可能にした。これに対してブルカーはAFMと赤外分光技術とを結びつけたナノスケール赤外分光分析装置nanoIRシリーズを発売した。図7左はナノスケール赤外分光分析nanoIR3の外観で、AFMのカンチレバーの動きを正確に検知するレーザーの他に赤外分光用のレーザーを備えている(図7右)。赤外分光用レーザーの波長は自由に掃引でき、ある波長を吸収する組成の試料部分は光を吸収して膨張する。これをAFMのプローブで捉えて画像化することにより、その化学成分の分布が得られる。AFM測定には信頼度の高いタッピングモードがその能力を発揮する。

図7: ナノスケール赤外分光分析nanoIR3-sの外観(左)と内部構成(右)

図8は、PMMA-PEMAポリマーブレンド試料の分析例である。図8(a)にナノ局所場由来の各々のスペクトルが示されている。図8(b) はナノスケールの表面凹凸形状、図8(c)はその化学組成分布を表している。


図8: AFM-IRによるPMMA-PEMAポリマーブレンドの分析

ブルカージャパン はこれまで、マテリアル向けの最先端AFMを中心に出展してきた。今回はライフサイエンス向け高速AFM、化学組成分析機能を有したAFM-IRなどの新製品が加わる。会場やセミナーでAFMの潜在能力を確認することにより、AFMの活用、ナノテクノロジーの展開の進むことが期待される。

(注)図は全てブルカージャパン から提供された。

小間番号 : 1W-D15 

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