Nano Insight Japan

【JST 知財活用支援事業】
有機-無機ハイブリッド型ペロブスカイト光センサー ~金属錯体層を利用した光電流増幅により、低電圧駆動・超高感度を実現~

2020年12月7日

JST

科学技術振興機構(JST)では、JSTがファンディングした大学等の研究成果で創出された特許やJSTが保有する特許について、積極的にライセンス活動を行っている。ライセンス可能な特許データベースは、「J-STORE」で公開している(https://jstore.jst.go.jp/)。また、新型コロナウイルス感染症に関連する保有特許に関しては、無償開放している。今回のnano tech 2021では、以下の3つの研究成果について、企業での実用化に向けた特許ライセンス・技術移転を推進する有力候補として紹介する;

  1. ① 有機-無機ハイブリッド型ペロブスカイト光センサー
  2. ② ナノダイヤモンドを用いた生体たんぱく質構造解析技術
  3. ③ 蛍光・化学発光タンパク質を応用した解析技術

https://unifiedsearch.jcdbizmatch.jp/nanotech2021/jp/nanotech/details/YM_6_U6UaFc

本記事では、上記の内、超高感度・低電圧駆動化により多彩な市場が期待される①について、以下に詳細を紹介する。

1.有機-無機ハイブリッド型ペロブスカイト光センサーの特徴・構成・原理

本発明は、桐蔭横浜大学の石井あゆみ氏が発明者、JSTが出願人で2020年8月13日に国際公開された特許(WO 2020/162317)で、発明の名称は「光電変換素子、光電変換装置、光電変換素子前駆体、光の検出方法、および光電変換素子の製造方法」である。
従来、微弱光の検出にはアバランシェフォトダイオード (APD) や光電子増倍管など、高電圧(~数100V)印加による光電流増幅現象を利用したものが一般に用いられている。しかし、高電圧駆動ではエネルギー損失が大きく、暗電流によるノイズ増大などの課題があった。この課題に対し本発明では、1V以下の低電圧駆動で光電流増幅することで、超高感度な光センサーを実現する。
本光センサーは、図1(a)の断面電子顕微鏡写真や図1(b) 模式図に示すように、TiO₂多孔膜表面にペロブスカイト (CH₃NH₃PbI₃) のナノ粒子(2~3nm)、さらにEu錯体の単分子膜を化学的に結合した薄膜 (厚さ180 nm)を、Ag電極と透明電極 (TCO:Transparent Conductive Oxide) で挟んだダイオード素子である。図1(c)の分子構造に示したように、ペロブスカイトが有機-無機ハイブリッドであり、Eu錯体の配位子部が有機分子、TiO₂が無機材料なので、全体として有機-無機ハイブリッド型光センサーになっている。

図1(a): 素子断面の電子顕微鏡写真

図1(b): 素子断面模式図

図1(c): 分子構造

本センサーでの低電圧光電流増幅の原理を、図2の素子断面エネルギー―バンド図で説明する。透明電極側から入射した微弱な光は、ペロブスカイトのナノ粒子で吸収されて電子とホールを形成する。形成されたホールは、Eu錯体との界面に捕集されると、電界が集中するためにエネルギーバンドが曲がる。そのため、Ag電極から電子がトンネル電流としてEu錯体に注入される。1V以下の低電圧であっても極薄膜 (< 5 nm) に印加されるので、単位長さ当たりの電界強度は極めて高く、光電流は2900倍に増幅される。
図3は、400~800nmの可視光を照射した時の光センサー出力で、横軸が時間、縦軸は電流密度である。駆動電圧は-0.5V、照射光強度は0.76mW/cm²でのデータである。光電流の増幅率2900倍、受光感度1289 A/W、暗電流は10⁻⁸ A/cm²と少ない。光が照射されない時は、有機物は絶縁体なので電流は流れず、暗電流は抑制される。検出のダイナミックレンジは1 μW/cm³~10 mW/cm³と4桁もあることも、本センサーの特徴である。
本光センサーの製造プロセスは、電極以外はスピン塗布などの湿式プロセスで行える。従って無機光センサーと比較すると、大面積化や低コスト化が容易である。

図2: 素子断面エネルギーバンド

図3: 可視光照射に対する電流応答

2. 低電圧駆動・超高感度光センサーの想定される用途

本センサーの特徴である低電圧駆動、超高感度、低ノイズ、広いダイナミックレンジなどの特徴を活かして、以下のような応用分野が想定される;
① 防犯カメラ、監視カメラ、暗視カメラ
② ロボット用の視覚センサー、携帯・スマホ用のセンサー
③ 衛星用イメージセンサー、小型非接触体温センサー (光吸収層の選択により、受光波長は紫外~近赤外まで拡張可能)
APDや光電子増倍管などの代替えではなく、低電圧駆動・超高感度光センサーでないと実現できない新しい用途を開拓することを期待している。

展示ブースでは、本センサーの試作品も展示する。ご興味ある皆様には是非、展示ブースに立ち寄っていただき、特許のライセンスや技術移転他も含めてご検討いただければ幸いである。

(註)図は全て桐蔭横浜大学提供

小間番号 : 1W-H15 

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