【株式会社ニチレイ】
話題の新素材「不凍タンパク質」
食料・医療・ものづくり分野等への応用展開に期待

2017.1.17

冷凍食品や冷凍物流大手の株式会社ニチレイは、素材「不凍タンパク質」の出展で、nano tech 国際ナノテクノロジー総合展に初参加する。不凍タンパク質(AFP: Antifreeze Protein)は次のようなユニークな機能を持つタンパク質である。
(1) 氷結晶成長抑制機能:氷の結晶に結合して氷が大きな塊になるのを阻止する機能で、凍結物の品質を守る。

(2) 細胞保護機能:細胞膜に結合して膜を安定化し細胞の生存時間を延長する。

この不凍タンパク質について、ニチレイは次表のような用途の広がりを期待している。

適用分野適用例
食品分野冷凍食品、フリーズドライ製品、氷菓、アイスクリーム等の品質向上
畜産分野精子、受精卵の保存
医療分野各種細胞や組織の保存
試薬、化成品分野 冷凍下における製品の安定化剤としての利用
工業分野寒冷地域向け:インク、塗料、セメント等の凍結解凍安定化

機能性材料の開発:多孔質材料

◆そもそも不凍タンパク質とは

地球上の氷に覆われるような陸や海に棲む生物の体内に存在するもので、身体が凍結するような低温に耐えて生存するために備わったものである。1969年に米国イリノイ大学Arthur DeVries教授により南極海に棲む魚の血清から発見されて以来学術的に関心がもたれ、魚以外にも昆虫、植物、菌類などから発見されている。実用化についてはアイスクリームなど食品分野での製品化がはじまっている。

◆ニチレイの製品

ニチレイでは10年以上前から、実用化を目指して研究を行なっている。この度、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)との共同開発で、不凍タンパク質の抽出・精製法を確立し、その製品化に成功し、2016年9月に次の製品の発売を開始した。
・高度精製Ⅰ型およびⅢ型AFP(タンパク質含量90%以上)
・粗精製Ⅰ型(タンパク質含量25%以上)およびⅢ型(タンパク質含量20%以上)AFP
・粗精製不凍糖タンパク質(AFGP)(タンパク質含量15%以上)
今回は特に、企業や大学の研究機関からのより高度精製品が必要との要望に応えている。ここでAFPの型の違いは、抽出した魚の違いで、Ⅰ型AFPはカレイ科の魚種、Ⅲ型AFPはゲンゲ科の魚種、AFGPはタラ科の魚種から抽出したものである。魚の種類によって分子構造や特性も異なる。nano tech 2017では、ニチレイは、新発売の不凍タンパク質の性質を示す実験結果や、応用の可能性を紹介する。以下にその一端を記す。

◆不凍タンパク質の特徴を示す実例

(1) 氷結晶に直接結合して結晶の成長を抑制する効果

図1は、通常の氷とAFPを含む氷の比較である。通常の氷は凍結時の速度に応じて氷結晶の大きさが変化し、速度が遅いと大きな氷塊になり、凍結物の品質低下をもたらす。一方、AFPを含む水を凍らせた場合では、AFPが氷結晶に結合してその成長を阻止し、バイピラミダルな形状の微細氷晶を作ることで、凍結時の速度にほとんど関係なく凍結物の品質が守られる。急速凍結不要の省エネ凍結技術の創出も期待されている。

図1:通常の氷とAFPを含む氷の顕微鏡画像と部分を拡大したイラスト*

(2) 緻密な多孔質構造の実現-----うずら卵の白身の冷凍保管実験

うずら卵白身を、水およびAFPを5%含む溶液に一晩浸漬したものについて、-40℃での凍結直後とその後-10℃で2週間冷凍保存した後の顕微鏡写真を図2に示す。水(AFP無添加)では、氷の結晶が成長し、解凍後に白身の中に大きな空洞が出来て食感が低下するが、AFP添加では氷は微細状態を維持しており、解凍後の食感の低下は少ない。ニチレイは、この細密構造を作る機能を活用した多孔質セラミックスの共同開発を産総研中部センターと行い、複数企業と実用化を進めている。

図2 うずら卵白身の冷凍直後と2週間保存後に於けるAFP無添加と添加の比較

(3)溶質成分を均一に分散させて凍結
図3は容器の水にインクを溶かして凍結させた結果で、AFPなしでは容器壁面からの氷の成長によって溶質が真ん中に押しやられて濃縮するが、AFPありでは溶質が均一に保たれたまま凍結している。

図3:凍結濃縮抑制機能

(4)細胞の冷蔵保存が可能に
産総研との共同研究により、魚類由来の不凍タンパク質が、氷の他に細胞膜にも結合して、細胞の冷蔵保存が可能なことが実証された。図4に実験結果を示す。ラットの膵島細胞をⅠ型AFP添加の細胞保存液に浸して4℃で保存し、120時間後に60%の生存率が得られた。その細胞は体温付近に戻したところ保存前と同レベルのインスリン分泌能力を保っていることが確認された。再生医療など、今後の医療分野の進展への貢献が期待される。

図4:細胞の冷蔵保存での生存率*

◆不凍タンパク質の広い応用展開に向けて

ニチレイは、今後の展開として、多くのユーザのニーズに応えるように低価格化を図り、食品分野では匂いや味の改良も行う。また、不凍タンパク質単独でなく、低温関係の保有するスキルや装置も含めてユーザの抱える問題へのソリューションの提供を考えている。広い応用分野での活用の可能性を秘めた素材であるので、多くの人がニチレイの展示ブースを訪問されその魅力を実感して頂き、その応用に関する情報交換されることを期待したい。

(註)図は全てニチレイ提供(*印は産総研 津田栄氏が提供元)

小間番号:5E-17
セミナー:2月17日(金)(B会場)14:10-14:55

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